取締役大学講座・ガバナンス構築編T
講座概要/講師師介


コーポレート・ガバナンス概論
 2008年4月10日(木)18:30〜20:30

【講座概要】
 資本主義経済のもとでは、株式会社は適正な体制を確保し、継続的に利益を上げることで、長期的な企業価値を創出していくことが求められています。
 ここでは、ガバナンス構築と企業価値向上に関する知識の基礎として、マクロ経済学の視点から経済環境を概観した後、現代企業、特に株主が広く分散した上場会社が構築すべきガバナンスのあり方、ガバナンスとマネジメントの分離、ガバナンスを実現するための取締役会のあり方、指名・報酬・監査の委員会の機能といった、ガバナンスの柱と言える部分についての基本的な理解を深めます。
 さらに、コーポレート・ファイナンスの視点を加味し、ガバナンス構築の目的である長期的な企業価値創造のための方法、プロセスについても簡単にとり上げる予定です。

【講師略歴】
若杉 敬明(わかすぎ・たかあき)
東京経済大学経営学部 教授、東京大学 名誉教授
全国社外取締役ネットワーク 理事
日本コーポレート・ガバナンス研究所 理事長・所長
東京大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科修了。
東京大学経済学部助手、横浜市立大学商学部助教授、東北大学経済学部助教授、東京大学大学院経済学研究科教授を経て現職。専門は、コーポレート・ファイナンス、コーポレート・ガバナンス。
潟潟Rー 社外取締役、JFEホールディングス梶@社外監査役、劾TTドコモ 社外監査役。


●法的側面から見たコーポレート・ガバナンス
 2008年4月22日(火)18:30〜20:30

【講座概要】
 日本でコーポレート・ガバナンスの意識が薄い原因の一つには、取締役の責務、取締役会の機能が正しく認識されていないことが挙げられるでしょう。
 日本では取締役が業務執行者と混同されていますが、法的には取締役とはどのような存在で、何に対して責任を負っているのか、法的側面から株主主権の根拠を明らかにすることがガバナンスの理解を深めることにつながると考えられます。
 日本では委員会設置会社と監査役会設置会社の二つの制度が並存していますが、二つの制度における取締役の役割を明確にした上で、取締役会の決定機能と監督機能、それを司る取締役の善管注意義務と忠実義務について法的側面からの理解を深めます。

【講師略歴】
中島 茂(なかじま・しげる)
中島経営法律事務所 代表弁護士
東京大学法学部卒業。
司法研修所を経て、1979年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)
1983年中島経営法律事務所を設立
1984年弁理士登録
1995年名古屋工業大学非常勤講師就任
1996年経団連「行動憲章」策定に関与
1997年警察庁「情報セキュリティビジョン策定委員会」委員
2002年経団連「行動憲章」改訂に関与
2003年日本証券クリアリング機構 監査役
2006年投資信託協会「規律委員会」委員
2007年経団連「行動憲章 実行の手引き」改訂に関与


●機関投資家の求めるIRの実践とコーポレート・ガバナンス
 2008年5月14日(水)18:30〜20:30

【講座概要】
 日本企業の資金調達は間接金融(銀行からの融資)が長く続いていたため、IRの歴史は浅く、現在でも十分なIRが行なわれているとはいえない状況にあるといわれています。グローバルな市場に参加する企業は、コーポレート・ガバナンスを確立しながら、長期的な視点を持つ投資家との対話は企業にとって重要な経営課題といえるでしょう。
 ここでは、日本の株主構成を把握した上で、機関投資家の目的と意思決定に影響を与える要因、議決権行使の状況、議決権行使のプレイヤーといった、機関投資家の現状を理解します。さらに、IRの中でとり上げられるガバナンス、敵対的買収防衛策など、機関投資家が求めるガバナンスと日本企業が考えているギャップ等についても理解を深めて、ガバナンス改善につなげていくことを考えていきます。


【講師略歴】
高山 与志子(たかやま・よしこ)
ジェイ・ユーラス・アイアール梶@マネージングディレクター
東京大学経済学部卒、エール大学経営学大学院修了MBA、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了 博士(社会情報学)。
メリルリンチNY本社投資銀行部門に入社後、ニューヨーク、ロンドン、東京でコーポレート・ファイナンス、M&A業務等担当。トムソン・フィナンシャル・インベスター・リレーションズアジア太平洋地域ディレクターを経て、現職。国内外企業のIR活動のコンサルティング(国内外株主判明と機関投資家の意識調査・分析、議決権行使促進・株主総会関連支援、TOB関連支援等)を行う。



●コーポレート・ガバナンスにおける機関投資家の役割
 〜企業年金連合会のコーポレート・ガバナンスへの取り組み

 2008年5月27日(火)18:30〜20:30

【講座概要】
 日本の上場企業の間でコーポレート・ガバナンスの浸透が遅れているのは、年金基金をはじめとした長期的機関株主によるガバナンスの働きかけが十分ではないことに一因があるといえます。そのような状況の下、企業年金連合会はコーポレート・ガバナンスに積極的な取り組みを行なってきたことは周知のとおりです。この動向は、企業年金連合会の特異な行動ではなく、今後、国内の年金基金、機関投資家にも及んでいくでしょう。
 日本の先進事例として、企業年金連合会が行なってきた、ガバナンス向上にかかわる一連の活動、具体的には、運用受託期間に対する議決権行使ガイドラインの制定、インハウス運用と議決権行使、議決権行使基準の作成、社外取締役の独立性基準の策定、議決権行使にかかわるインフラの整備、といった点について理解を深めて、機関投資家が求めるガバナンスについて考えていきます。

【講師略歴】
矢野 朝水(やの・ともみ)
企業年金連合会 専務理事
全国社外取締役ネットワーク 理事
京都大学法学部卒業。
1969年厚生省入省、81年厚生年金基金連合会企画振興部長、92年厚生省薬務局企画課長、94年大臣官房総務課長、95年大臣官房審議官、96年年金局長、2001年退職。2001年厚生年金基金連合会専務理事に就任、現在に至る(05年10月から企業年金連合会へ改名)。


●証券取引所と上場会社のコーポレート・ガバナンス
 2008年6月11日(水)18:30〜20:30

【講座概要】
 諸外国とは異なり、日本の証券取引所は、上場規則の中に社外取締役の選任を義務付けられていないなど、国際的にみるとコーポレート・ガバナンスに消極的な印象を持たれています。
 しかし、東京証券取引所は上場企業のガバナンスにも積極的な姿勢を見せており、2004年4月に「上場会社コーポレート・ガバナンス原則」が発表され、2006年からは全上場企業に対して「コーポレート・ガバナンス報告書」の提出を義務付けています。社外取締役について言えば、選任の有無、属性についての開示が求められていることから、機関投資家が主張するガバナンス強化の流れと相まって、間接的にではあるが、社外取締役の選任が促されていくと思われます。
 日本の証券取引所が上場企業に求めるガバナンスは着実に進化しつつあります。ここ5年間のガバナンスに関連する取り組み、証券取引所が現在求めているガバナンスと今後の展望についても解説いただくことで、上場企業が対応すべきガバナンスについて理解を深めていきます。

【講師略歴】
河野 秀喜(こうの・ひでき)
鞄結桴リ券取引所 上場部長
千葉大学人文学部卒業
1983年東京証券取引所入所。調査部、経済企画庁出向、上場部、人事部などを経て、2000年10月より株式会社証券保管振替機構に出向し、証券決済制度改革を担当し、2003年3月に短期社債振替業務室長、2006年6月に投資信託振替業務部長を歴任後、2007年6月より現職。
現在、財団法人財務会計基準機構基準諮問会議委員、
経済産業省ベンチャー企業の創出・成長に関する研究会委員、
経済産業省企業価値研究会オブザーバーなどを努める。